公益社団法人 日本青年会議所 第74代会頭 外口 真大 会頭挨拶
戦わないことを皆が選ぶこと、ただそれだけ。
助けを求めている人がいるならば手を差し伸べ、自らが苦しみも湧く、時には助けてもらう。
相手が、いや全ての人が自分と等しい存在なのだと気づいた時、 世界中のどんな飢餓を、貧困も悲惨も惨劇も、私たちは一瞬で終わらせることができるのです。いつかじゃなく、今この瞬間に。
これは私の理想です。青臭いと馬鹿にされるかもしれません。
実現不可能だと笑われるかもしれません。しかし、歴史を振り返ってみてください。
120年前、ライト兄弟が初飛行を果たすまで、誰もが 人は空を飛ぶことができないと信じていたのです。しかし、今 思い立てば、明日になって地球の裏側にすら行くことが可能なのです。
理想を成し遂げられた時、ただの可能なことへと成り下がります。それでは、 皆さんの理想はどのようなものでしょうか。皆さんが描く理想の未来は どんな未来なのでしょうか。理想の未来で、皆さんの愛する人は、愛する家族は、愛する仲間は、笑顔で笑っているでしょうか。
理想は現実にある。これは過去の歴史が証明してくれています。しかし、 どんなに素晴らしい理想も自らの手で描かなければ、それは人生という後悔を 羅針盤なしに進むのと同じなのです。だからこそ、理想を語りましょう。
たとえ他人にどれだけ否定され、我々としても理想を掲げ、 その理想を現実にするのだという強い使命感を持ち、行動をする。これこそが未来を作るということなのです。私たちは理想を現実にすることができます。
さあ、世界を作りましょう。
私たちは今まで社会課題の抽出と解決に注力をしてきました。しかし、今、社会課題は、それらは複雑に絡み合い、そしてその課題を挙げればきりがありません。その1つ1つを モグラ叩きのように解決をしていったとしても、それはアクションではなくリアクションなのです。
そして、リアクションを続けていれば、いつの日か全てが後手後手に回り、永遠に課題解決を続けなければいけないということになります。だからこそ、 社会課題解決運動から社会開発運動へ転換する、これこそが今重要なのです。
未来を予測する方法は1つしかありません。それは、自らの手で未来を作るということなのです。
理想を掲げ、現実を認識し、理想と現実の距離を理解する。
これこそが我々青年会議所運動の原点なのです。
そして、今、世界は混沌の中にあります。気候変動、不平等、貧困、紛争、 そしてエネルギー問題と、それらが複雑に絡み合い、社会課題として山積しています。
日本だけ良ければいい、そういった考えでは国際的な孤立を生み、そして何よりそれらの課題は1カ国では解決することができないのです。しかし、 恐れる必要はありません。混沌とは未知の可能性なのです。
もし日本が困っているのならば、助けてもらえばいい。もし日本が解決策を持っているのが手を差し伸べればいい。そのような国際連携こそが、世界を作る光となるのです。
本年度JCI回答に下山田くんがこの日本より輩出されています。
そして、世界には15万人を超える仲間がいるのです。
その15万人の仲間とともに、混沌の中に一筋の光を通す。それこそが私たちの使命なのです。
そして、2025年は節目の年と呼ばれています。昭和100年、そして 終戦から80年を迎えます。日本国内でも社会課題が山積をし、 経済でも失われた30年とすら言われています。確かにそうなのかもしれません。
しかし、日本はその30年を失ったとしても、未だに力強く世界4位に居続けているのです。
日本の底力はまだまだこんなものではないはずです。事実、 訪日外国者数は毎年最高を記録しています。2023年には盛岡市が、2024年には山口市が、ニューヨークタイムズ市の今訪れるべき場所に選定されました。
東京でも大阪でもなく、これは地域にもまだまだ眠っている魅力がたくさんあるということなんです。その地域の魅力をさらに磨き上げ、JCIのネットワークを活用し、日本の底力を世界に見せつけましょう。
そして、明るい豊かな社会を目指す我々青年会議所ですが、時折、JCのせいで 会社の業績が悪化をした、JCのせいで家庭がうまくいかないといった話を聞くことがあります。
社会の最小単位は家族なのです。
家族、会社の犠牲の上に明るい豊かな社会は成り立たないのです。
そして、我々の総氏も、青年会議所というのは家族、会社、地域を良くしたいという青年が集まったと 話しています。これこそが我々青年会議所の原点なのです。
ただ、家族、会社を大切にして全身の時間を減らせばいい、そういうことではありません。
なぜなら、地域が潤えば会社が潤う、会社が潤えば給料が上がり、 生活が安定し、家族も良くなる。そして、世間では、仕事と家庭のバランス、ワークライフバランスが重要だと叫ばれています。しかし、私たちは その中であっても、あえて3足目のわらじを履くことを決めたのです。
辛いこともあるかもしれません。しかし、その先に愛する人や愛する仲間が 笑顔で過ごせる未来がある。それならば、その苦しみを楽しもうじゃありませんか。
私たちのJC運動は、家族、会社、地域のためだと誇れる未来を作らなければならないのです。
そして、今、何か新しいことを始めようとするとき、今の日本は 少し生きづらいのかもしれません。インターネットを見ていると、過度に人が批判をされ、 過度に足の引っ張り合いが行われています。そして、我々青年会議所も同じ危機にさらされているのです。1人のミス、1人の過ちによって 我々青年会議所の全てが否定されてしまう。99パーセントがいいことをしても、 一般制度の過ちで全てが無に徹してしまうのです。
社会は時に残酷です。損をすることもあるでしょう。理不尽に責められることもあるでしょう。
助けた仲間に裏切られ、行った善行は忘れ去られ、気づいたものを失って、周りには敵ばかり起こるかもしれません。それでも手を差し伸べてください。
善いことをしてください。損を恐れず、壊すより作り、絶望には希望を、 悲しみには喜びを与え続けなければならないのです。なぜなら、こんなに苦しい世界を 私たちの子供に残すわけにはいかないからです。
そして、いつの時代も未来を作ってきたのは我々青年です。そして、我々も自ら過去になります。
しかし、今この時、この日本という国の物語の主人公は間違いなく私たちなのです。
私は2023年、国際担当常任理事としてアジアをはじめ世界各国を回りました。
そこで気づいたのは、特にアジア圏の人々が今日より明日はもっと良くなる。
そう信じて生きているということでした。悲観的にならず、明日を信じ生きる姿は とても眩しく、そして羨ましいとすら思いました。
その光景を見た私は、きっと高度成長期の日本も同じだったのではないかというふうに感じました。
しかし今、失われた30年、経済格差、人口減少と悲観的なニュースばかりが取りざたされています。
確かに日本人には物事を悲観的に捉える人が多いのかもしれません。
危機に際して慎重であるということは絶対に必要です。しかし、過度に悲観する必要はないのです。
私たち日本は半世紀以上平和を築き、繁栄を続けてきました。
ジャパンアズナンバーワンとさえ言われ、諸外国から尊敬されるモデルの1つにもなりました。
そして、東日本大震災と多くの危機を乗り越えてきたのです。
だからこそ、日本は今後どんな難局が訪れたとしても必ず乗り越えられる。私はそう信じています。
私たちの運動はWe Believe、信じることから始まるのです。
もし奇跡が起こるとするのならば、それはここにいる全員が理想を掲げ、その実現を信じ、歩み始めた時にほかなりません。
さあ、世界に我々を、理想という旗を見せつけましょう。
Raise Your Flag 変わったのではない。変えたのだと誇れる未来へ。
外口会頭が2025年1/26京都会議でお話しされた内容を書き出しました。