1956年、戦後間もない混沌とした時代のなか、高い志を持った先輩諸兄が宇部青年会議所を創設し、本年で70年を迎えます。宇部市の未来のためにと、それぞれの時代が抱える問題に立ち向かい続け、その利他利愛の精神と行動力は我々の世代まで受け繋がれています。
昨今では、世界情勢の変化やAI(人工知能)など、テクノロジーの急速な発展により、予測不可能な事態が続き、既存の価値観やビジネスモデルなどが通⽤しない時代であると言われています。物事の不確実性が高く、急激な変化が起こる時代を指す言葉としてVUCAという言葉が注目されています。VUCAとは4つの単語の頭文字をとった言葉で、それぞれ「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」を意味します。まさに現在の社会情勢にあてはまるのではないでしょうか。
日本における総人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少、また、高齢者の占める割合も年々増加の一途を辿っており、生産年齢人口の問題も顕著化しています。それに加え、戦争の勃発や、国際的な原材料価格の上昇、円安による海外からの輸入コストの増加など、人々の生活は依然として厳しいものであり、明るい未来を描けずにいます。
このVUCA時代における人々の心の変化について考えたとき、人々は他人を思いやる心の余裕がないように感じます。悪い言い方をすれば、「自分さえ良ければいい」と、自分のことにしか関心を持たない、あるいは、他人に関心を持てない人々が増えてきているように思えます。私は、このような自分中心になってしまっている人の心を、相手を思いやるものへと変えていきたい、一人ひとりが「和の心」持つようにしていきたいと考えます。
「和の心」とは、我々日本人の心の根底にあるもので、他者を気遣い自分の我を抑制すること、個人よりも集団の秩序や調和・礼儀を重んじる「心」のことです。
しかし、この「和の心」は、ただ一人が持つだけでは与える一方で、持続していくことは不可能です。一人ひとりが「和の心」を持つことで、互いを思いやり、「和の心」を繋げることができます。今年度のスローガンとさせていただいた「RISE AS ONE」とは、一つになって立ち上がるという意味があり、まさにこの「和の心」、互いを思いやることを矜持として会員が一体となって、次世代に誇れる魅力あるまちづくりを展開していきましょう。
第70代 理事長
松本 誠矢
組織において大きな目標へ向かうとき、リーダーなくしてそれを達成することは困難ではないでしょうか。個々の考えをまとめ、全員で同じ目標に向かって進むことで組織は、より大きな力を発揮します。そして任命されたリーダーの能力は、組織の力に大きな影響を与えることになると考えます。
では、目標を達成するにあたり、理想的なリーダー像とはどのような姿でしょうか。コミュニケーション能力が高い人、判断力・決断力がある人、責任感・行動力がある人など、多く挙げられますが、その中で私が最も重要であると思うのは、JAYCEEの「人として」という基本姿勢であると考えます。JAYCEEとは青年会議所会員を指します。JAYCEEである我々は、このまちを牽引するリーダーとして、青年会議所活動を通じて、日々修練しています。しかし、どれだけ能力が高い人でも、JAYCEEの「人として」の部分が欠けていれば、心から敬うことはできません。自己中心的で他人の気持ちを理解できない、もしくは理解しようとしないJAYCEEが「明るい豊かな社会の実現のために活動しよう」と叫んでも、その声は届かないのではないでしょうか。
まずは、己を律することから始め、他人に迷惑をかけないのは当然として、与えられた役割に責任を持つことです。そのうえで、仲間の為に、組織の為に、地域の為に厳しさをもって行動していくことが、求められるリーダー像ではないでしょうか。
「JCしかない時代」から「JCもある時代」へと変わり、多くの団体がそれぞれ特色のある運動を展開しているなか、地域にとって、なくてはならない存在だと認めてもらうためには工夫が必要です。地域のオピニオンリーダーとしての、宇部部青年会議所の存在感や魅力がさらに高まるよう、まずは自分自身を見直していくことから始めていきましょう。
インターネットの普及により情報共有が簡単にできるようになった昨今、SNS上での繋がりが増える一方で、リアルな人間関係の希薄さを感じる時があります。これは都心部だけでなく、宇部のような地方においてもあてはまるのではないでしょうか。私は、このリアルな人間関係の希薄化を危惧しており、今一度、地域の連帯感を高め、心の繋がりを創り出すことが必要だと考えます。
これまで戦争や大災害など、数多くの困難を乗り越えることができたのは、そこに暮らす人々が、自助、共助、公助の精神で一丸となってその問題の対処に取り組んできたからです。人々の繋がりなくして大きな問題に立ち向かうことは困難だと考えます。
利他利愛の精神は、私が青年会議所に入会し、学んだことの一つです。互いを思いやることで、連帯感が生まれ、困難に立ち向かうことができた経験は私にとって大きな財産です。この経験を広めていくことが、人間関係の希薄化を解決し、心の繋がりを創り出す一つの策ではないかと考えます。
心の繋がりを創り出す一つの具体策として、我々青年会議所だけでなく、市民一人ひとりが、このまちの将来を「自分事」として考えることがあげられます。若者の人口流出や中心市街地の空洞化など様々な問題が顕著となっているこの宇部市において、市民それぞれが、自分の住むまちの将来像をもち、そのイメージを実現するために行動する。そのなかで、市民と地域の連帯感が生まれ、地元愛も深まり、結果として、今より魅力的なまちに変えていくことができるのではないでしょうか。
私はこの青年会議所に入会し、仲間の大切さを知ることができました。一人では挫折してしまう困難でも仲間と共にならば、成し遂げることができます。
1人より2人、2人より3人、その仲間の数が多ければ多いほど、より大きな問題に立ち向かうことができます。逆を言えば、会員拡大なくして組織の発展はあり得ません。会員拡大は、我々が抱える大きな課題の一つとしてあげられます。
会員拡大に向けて、まず、最初にできることは、青年会議所会員であることに誇りを持つことではないかと私は考えます。会員の言動は、未来の仲間を増やすことに大きな影響を与えます。その言動は周囲から常に見られていることを理解しなければなりません。自分の言動に誇りを持ち、その言動を称えあうことができる組織は、きっと魅力あるものに感じてもらえることでしょう。
心から信頼し、互いに支え合い、ともに歩んでいくことができる仲間を一人でも多く迎え入れていきましょう。
一般社団法人宇部青年会議所は本年創立70周年を迎えます。永きに渡ってこの宇部青年会議所を支えてくださった先輩諸兄に対する敬意と感謝の心を持って、本年も活動してまいります。敬う心と愛する心、互いを想う心で繋がっていくことができるのは、我々のもつ文化の誇りです。使命感をもってこの「心」を次世代へと繋げ続けていきましょう。
私の好きな言葉に「人生の岐路に立ったとき、どっちの道を進むかで迷ったときは、困難な方を選ぶとよい」という松下幸之助の言葉があります。その選択は、他方の選択肢を選んだときに比べ、大変な道になるでしょう。「大変」という漢字が「大きく変わる」と書くように、自分が追い込まれたときこそ成長し、大きく変わることができると私は考えるようにしています。
しかし、人間はそこまで強くありません。大変なことからは逃げたいと思うのが現実です。そのような大変なときこそ、顔をあげて、周りを見渡してみてください。あなたの周りには同じ志を持った仲間(会員)がいます。
一人では困難なことも、仲間とだったら乗り越えることができます。そのような環境(団体)に身を置くことに幸せを感じ、心から信頼できる仲間と共に、一体となって青年会議所運動を邁進し、より良いまちづくりを展開していきましょう。